まず起業するにあたって、「法人」ではじめるか「個人事業主」ではじめるか、迷われる方も多いかと思います。ここでは法人を選択した場合のメリットとデメリットをまとめましたので、それぞれの状況において、どちらがいいかご検討ください。
メリット
- 法人にすれば、配偶者その他の親族にある程度自由に給料の額を設定できます。
- 個人事業主の場合、配偶者等に給料を支払うには専従者届が必要です。
- 法人の場合は代表者の給料(役員報酬)を取ることが可能で、給与所得控除が使え、個人事業より有利です。さらに、利益をある程度コントロールしやすくなります。
- 個人の場合、決算月は12月と決まっていますが、法人は決算月を1月から12月までの好きな月に設定できます。
- 個人事業者の場合、赤字決算となれば3年間しか赤字を繰り越せません。
法人は9年間繰り越せるので、決算対策効果を長く保てます。 - 設立時資本金1千万円未満の事業者は一定の場合を除き、設立第1期及び第2期の消費税が免税されます。
デメリット
- 法人を設立するための費用がかかります。
また、税理士への報酬が個人より高くなりがちです。 - たとえ赤字決算であっても、法人住民税については均等割という固定税額(最低限7万円)を納税しなければなりません。
- 法務局への役員変更登記代(印紙税)が、役員の任期ごと(最長10年)に1万円必要です。
- 個人事業主の場合、青色申告特別控除が65万円ありますが、法人にはありません。
会社設立前の準備について
- 【1】会社名(商号)を決める
- 会社名は、漢字以外のローマ字・カタカナ・ひらがなでも登記可能です。
- 【2】本店所在地を決める
- 「本店」とは、いわゆる「本社」のこと。
法人成りの場合などで、自宅を本店にしてもなんら問題はありませんが、自宅が賃借物件なら注意が必要です。家主さんによっては、法人との契約を断るケースや、法人契約にするなら家賃を上乗せするケースもあります。
- 【3】事業目的を決める
- 事業目的には具体性を持たせることが必要です。
将来、行う予定にしている事業も入れておくことができます。 - 【4】資本金の準備
- 資本金は、1円でも設立が可能です。ただし、会社を維持運営していくのであれば、ある程度の資金がなければスタートを切れません。資本金が少ないと融資を受ける場合に不利ですし、債務超過になりやすいので、極端な少額は避けましょう。
また、資本金が、1,000万円以上である場合は、起業初年度から消費税が課税されます。そこで、1,000万円未満で設立、登記されることをお勧めします。 - 【5】発起人(出資者)・役員(取締役会設置)を決める
- 設立には、「発起設立」と「募集設立」の二つの方法があります。「発起設立」とは、設立時の発行株式の全部を発起人が引受け、発起人以外からは株主を募集しない方法です。つまり、身内や知人だけで資金を出す形です。
- ※「募集設立」とは、発起人以外から株主を募集して設立する方法です。身内や知人以外の出資者がいるため、想定外の会社買収などを防ぐために、「株式の譲渡制限」を付けておく必要性が出てきます。
- 近年多いのが、他人に出資者を募ることをせず、発起人=一人=取締役になり、取締役会も設置しない「一人株式会社」の形態です。この場合、役員(取締役)の任期も法定の上限である10年にします。
- 【6】事業年度を決める
- 法人の決算月を決めます。会社設立月の前月を決算月にしますと、初年度の月数が多くなり、消費税の免税措置を最大限に生かすことができます。また、売上が一番少ない月を期末(または、売上が一番多い月を期首)にしておくと、利益予測を立てやすいといわれています。なお、3月決算や12月決算は、会計事務所の繁忙期と重なるので、なるべく避けましょう。
- 【7】会社の印鑑を作る
- 代表者印(実印)と銀行印を作りましょう。
- 【1】定款を作成、公証人の認証を受ける
- 前記の【1】~【6】をふまえて、定款を作成します。作成した定款は、公証役場で認証を受けます。
- 【2】出資金の払込
- 発起人の預金口座へ出資金を振込み、通帳のその部分のコピーを取ります。
- 【3】法務局に登記申請
- 管轄法務局で、会社登記の申請を行います。登記申請書に添えて、認証を受けた定款、役員の印鑑証明書、印鑑届その他を提出します。
登記申請の日が、会社の設立日となります。
- 【1】銀行口座の開設
- 登記完了後、会社の登記簿謄本(登記事項証明書)・印鑑証明書を取ります。
これらを銀行に持参し、預金口座開設の申し込みをします。 - 【2】税務署に設立届出書等を提出
- 設立後2ヶ月以内に、税務署に以下の書類の提出が必要です(2は、設立後3ヶ月以内)。
- ・法人設立届出書
- ・青色申告承認申請書
- ・棚卸資産の評価方法の届出書
- ・減価償却資産の償却方法の届出書
- ・給与支払事務所等の開設届出書
- ・源泉所得税の納期の特例の承認申請書
- ・消費税の届出書(消費税の新設法人に該当する旨の届出書など)
※登記簿謄本(登記事項証明書)のコピーを添付する必要があります。
- 【3】都道府県税事務所と市区町村役場へ設立届出書等を提出
- 「法人設立届出書」に登記簿謄本(登記事項証明書)のコピーを添付して提出します。
- 【4】労働保険の加入手続き
- 労働基準監督署へ「労働保険保険関係成立届」を提出し、公共職業安定所へ「雇用保険適用事業所設置届」などを提出します。
※登記簿謄本(登記事項証明書)などを添付する必要があります。 - 【5】社会保険の加入手続き
- 「健康保険厚生年金保険新規適用届」などを提出します。
※登記簿謄本(登記事項証明書)などを添付する必要があります。 - 【6】役員報酬を決める
- 法人の役員報酬は、通常、会計期間(事業年度)の途中では変更しないことになっています。たとえば、当初50万円としていた役員報酬を期中に60万円に上げてしまった場合、増加分の10万円は税務上の損金にならないので注意が必要です。予想売上・利益と連動して慎重に決定する必要があります。